Nakata Apiary Community Store






















香川県高松市西部、五色台を望む山裾の平地に建つ養蜂農家の店舗。
周囲は田畑や倉庫、住宅が点在する穏やかな農村地帯で、風通しと日当たりの良い開かれた環境が広がる。施主は、この地で長年にわたり養蜂を営んできた60 代の夫婦と、関東からU ターンしてきた40 代の娘夫婦。彼らは、事業の6 次産業化を目指すと同時に、日常的に地域活動を行い、公私を越えて地域と関わる姿勢を持っており、過疎化が進行する周辺地域の「ケア」に応答する、新たな場のあり方を模索してきた。
店舗は単なる販売所としてではなく、近隣住民や園児・小学生、地元商工会、高松市内のクリエイター、さらには観光客に至るまで、多様な主体が日常的に交差・滞留する交流拠点として構想された。養蜂体験や食育、子育て支援、部活動の場など、活動の幅は多岐にわたり、季節や利用者によって使い方が重層的に変化することを前提としている。
数年にわたる対話を通して、運営方法から建築の構え方までを検討した結果、内外に開かれつつも、機能ごとに緩やかに分節された、離散的で可変的な空間構成が導き出された。
雁行や曲線の壁面構成、可動家具、柱・梁・桁の軸線のズレを組み合わせることで、一つの空間に大小さまざまな居場所を生み出しています。これにより、複数のコミュニティが状況に応じて空間を再編集でき、集中と分散が同居する多様な集まり方を許容し、空間の編集性を確保した。
必要機能に対してスケールに余裕を持たせ、空間を完結させないことで、想定外の活動も受け入れる“余白”を内包させた。曲線の壁面は音を拡散し、視線を遮ることで、寄り合いや読み聞かせなど、無目的な滞在も誘発する。
菜の花畑に向かって拡張する片流れの屋根は天井高さが変化し、風景へ接続していく開放性を与える。大きな半屋外空間、四方に異なる性格を持つ開口部により、建物の内外の活動が風景に溶け込む。曲線屋根は山並みや地形と呼応し、風土と建築を結びつける。
このようにして、地域の人と活動が自然に混ざり合う「開かれた民間の集会所」としてのあり方を、この建築と計画で具体化した。今後も継続的に打ち合わせを重ねながら、外構や宿泊棟の整備を視野に入れ、地域に根ざした場を作っていく予定である。
所在地:香川県高松市
主要用途:販売所・事務所
敷地面積:697.12㎡
建築面積:219.98㎡
延床面積:163.13㎡
構造:木造一部鉄骨造
規模:地上1階
構造設計:福島佳浩
写真:長谷川健太
施工:植原建設
竣工2024