Niyodo river station in Ino-town
高知県いの町に建つ観光拠点施設の建替計画である。この建物が面する仁淀川は町の基幹産業である和紙製造に欠かせない水源であり、中心市街地が程近い中流域の河川敷は日常的な町民の憩いの場でもある。夏には花火が川の中洲から打ち上がり、町民にとって昔から大切な場所であり、魅力的なパブリックスペースである。
本計画において、そういった河川敷が持つ、おおらかで余白ある広がりを途切れることなく建物に自然に引き込み、一体的な環境を形成する事を重要視した。敷地は川以外にも国道、工場、住宅地といった複数の異なる環境とスケールに取り囲まれた多角形形状をしており、どの面に対しても裏とならないように敷地形状に沿って建物を配置し、屋根面を多方向に向ける構成とした。さらに、半外部空間を室の周りに設けて、風が敷地内を通り抜け、行き止まりのない連続性を確保した。
外観は空や山を引き立てる橙色をした量塊感のある建ち方によって、隣接する市町村の結節点でもある地域のランドマークとしての役割を果たしている。敷地内に入ると、開放的な木造架構を通して周辺地域の風景に意識が飛んでいく。また、川側から住宅地側にいくに従い、屋根の高さと柱の径を徐々に小さくして、川の大きなスケールから住宅の小さなスケールが違和感なく繋がり、敷地境界を超えて河川敷を含めた一体の環境の中に自分がいるような感覚になる。
周辺に対して、強く建つのでもなく、弱く建つのでもなく、そのどちらでもありながら、河川敷のもつ魅力的な空気感に柔らかく接続する建築を目指した。
drawing(click)
所在地:高知県吾川郡いの町
主要用途:飲食店、その他
敷地面積:1253.41㎡
建築面積:267.06㎡
延床面積:334.26㎡
構造:木造
規模:地上2階
構造設計:福島佳浩
設備設計:シグマ設備設計室
設計協力:ハウジング総合コンサルタント
施工:田邊工務店
竣工:2020