House in Eifuku-cho

































東京都杉並区の住宅街に建つ2世帯住宅の計画である。
富士山の見える最寄り駅から計画地に向かって斜面を下っていくと、徐々にスケールの落ち着いた住宅街に変わっていく。近くには神田川も流れており、この街では非常に大きなスケールと小さなスケールが近い距離で存在している。また、幹線道から住宅街の中に入ると、地形によって緩く曲がった道になって交通量も減り、道路にはチョークで落書きをしたり、ボール遊びをする子供の姿が見られ、道路が家の延長のように使われていた。こういった計画地周辺の街の魅力や特徴が生活の中で感じられ、身体が街へと拡張していくような住まいを目指した。
そこで、街区の角地で2面道路に接している敷地の中央にコンパクトに建物を置き、外周を回遊できるように道路と連続した経路を設け、暮らしが周辺の道路も含めた外部と関わりを持てるように配慮した。
断面計画としては、交差点に面する南側に天井の高い部屋を2つ、隣地建物に面する北側に天井の低い部屋を3つ積み上げ、4つの床レベルを設けて、高さによって変化する周辺のスケールや近景・中景・遠景の多様さを各部屋から経験できるように開口を設けた。さらに、バルコニーや庇を各所に出すことで、漠然とした外部空間にまとまりのある輪郭を与え、内部から外部、さらに街へと身体が拡張していくように工夫した。
平面計画は「Room」という外部と密接な関係を築いた小さな部屋群を、それぞれ適度な距離感を保って構成した。現在1階は親世帯で2,3階は子世帯が住んでいるが、将来的には子世帯が全て使ってもよいし、一部貸し出したり、小商いをはじめてもよい。Roomはどれも同程度の大きさで同じような仕上げだが、天井高さと部屋が接する外部環境の違いによって、インテリアに大きな差異が生まれる。
窓やバルコニーから見える隣地の外壁や万年塀、交差点を道行く人、切り取られた空、2軒隣の桜、西新宿のビル群、周辺建物の屋根の連なりといった、この場所を取り囲む風景の断片の集まりがこの住宅の個性となり日々の豊かさにつながる事を目指した。
所在地:東京都杉並区
主要用途:専用住宅
敷地面積:170.34㎡
建築面積:86.11㎡
延床面積:157.13㎡
構造:木造
規模:地上3階
構造設計:福島佳浩
写真:長谷川健太
施工:山菱工務店
竣工:2022